「オール電化はやめとけ」という言葉を見かけて、新築の設備選びに迷っていませんか。結論から言うと、オール電化が一律に損なのではなく、電気の使い方と災害への備え方によって向き不向きが分かれるというのが実態です。
筆者は2025年5月に注文住宅を建て、それまでに大手ハウスメーカー4社を回って比較しました。実際に住んでみると、午前中に暖房をつけておけば午後は暖房なしで過ごせるほど快適で、光熱費は設備だけで決まらないと実感しています。
この記事では、オール電化が「やめとけ」と言われる6つの理由と実態、ガス併用との比較、向いている人の判断基準までを中立の立場で解説します。
オール電化とは?新築住宅での設備構成をおさらい
「やめとけ」と言われる理由を理解する前に、まずオール電化がどういう住宅なのかを整理しておきましょう。ガス併用との違いは、給湯・調理・暖房という3つの用途をどのエネルギーでまかなうかにあります。
給湯・調理・暖房をすべて電気でまかなう住宅
オール電化住宅とは、家庭内で使うエネルギーをすべて電気に統一した住宅を指します。給湯はエコキュートなどの電気給湯機、調理はIHクッキングヒーター、暖房はエアコンや電気式床暖房が基本の構成です。
ガス管を敷地に引き込まないため、ガス会社との契約そのものが不要になります。逆に言えば、家中のエネルギーを電気1本に集約する選択でもあり、そこがメリットにもリスクにもなります。
ガス併用(都市ガス・プロパン)との構成の違い
ガス併用は、給湯と調理をガスでまかない、それ以外を電気で使う一般的な構成です。両者の違いを用途ごとに整理すると次のようになります。
| 用途 | オール電化 | ガス併用 |
|---|---|---|
| 給湯 | エコキュート等 | ガス給湯器 |
| 調理 | IHヒーター | ガスコンロ |
| 暖房 | エアコン・電気床暖房 | エアコン・ガス床暖房 |
| 基本料金 | 電気のみ | 電気+ガス |
| ガス管の引き込み | 不要 | 必要 |
「ハイブリッド」という中間の選択肢もある
オール電化かガス併用かの二択で考えられがちですが、実際には中間の選び方もあります。給湯だけガスにして調理はIHにする、ヒートポンプとガスを組み合わせたハイブリッド給湯機を選ぶ、といった構成です。ガス管さえ引き込んでおけば後から方式を変えやすくなるため、迷う場合は設計担当者に相談してみましょう。
オール電化が「やめとけ」と言われる6つの理由
ここからは、オール電化が「やめとけ」と言われる代表的な理由を1つずつ取り上げ、実態と対策をあわせて解説します。多くは事前に知っておけば設計段階で対応できる内容です。
理由1:電気料金の値上げの影響をまるごと受ける
最も多く挙がる理由が、電気代の変動リスクです。オール電化は家庭のエネルギーを電気に一本化しているため、電気料金が上がるとその影響が家計に直接反映されます。
電気料金は、基本料金と電力量料金に加え、燃料費調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金で構成されています。賦課金は年度ごとに見直され、2024年度は3.49円/kWh、2025年度は3.98円/kWhと上昇しました。
また、オール電化向けの夜間割安プランは、新規受付が終了したり単価が見直されたりすることがあります。契約時のシミュレーション通りにずっと推移するとは限らない点は、あらかじめ理解しておきたいところです。
一方でガス併用にも、都市ガスやプロパンガスの単価が上がるリスクがあります。どちらか一方だけが値上がりしない仕組みではないため、「電気だから危険」と単純化はできません。
理由2:停電すると給湯も調理も止まる
停電時に何もできなくなる、というのも代表的な懸念です。IHクッキングヒーターは電気がなければ動かず、エコキュートも新たにお湯を沸かせなくなります。
ただし、ここは誤解されやすいポイントでもあります。ガス給湯器の多くもリモコンや制御基板に電源を必要とするため、停電するとお湯が出なくなる機種が大半です。
停電時にも確実に使えるのは、乾電池で点火するガスコンロが中心です。つまり「ガス併用なら停電時も安心」ではなく、「調理の手段が1つ残る」という理解が正確といえます。
逆にオール電化側の備えとして、貯湯タンクにたまったお湯を非常用の生活用水として取り出せる点があります。370Lタイプならタンク1本分の水が確保できるため、断水時の備えとしては有利に働きます(原則として飲用は不可です)。
理由3:エコキュートの初期費用と交換費用が高い
設備そのもののコスト差も「やめとけ」と言われる理由の1つです。エコキュートは本体と標準工事を合わせて40〜60万円程度が目安で、ガス給湯器の15〜30万円程度と比べると差が出ます(2026年8月時点の目安・機種や地域で変動します)。
さらに、給湯機はいずれ寿命を迎えます。エコキュートもガス給湯器も交換の目安は10〜15年で、そのたびに費用が発生します。交換時の負担額に差が出る点は、長期の資金計画に織り込んでおきたいところです。

ただし新築の場合、ガス併用にはガス管の引き込み工事費が別途かかります。設備単体ではなく、総額でどれだけ差が出るかを見る必要があります(詳しい内訳は後述します)。
理由4:エコキュートの設置スペースと運転音
意外と見落とされやすいのが、設置スペースと運転音の問題です。エコキュートは貯湯タンクとヒートポンプユニットの2つで構成され、屋外に一定の設置面積が必要になります。
運転音はメーカー公称で38〜40dB程度とされ、数値上は静かな部類に入ります。ただし夜間に運転するため、隣家の寝室の近くに設置すると気になるという声もあります。
低周波音による不調の相談が寄せられたことを受け、消費者庁の消費者安全調査委員会は2023年12月に調査報告書を公表しています。報告書では、設置場所への配慮が重要であることが指摘されました。
対策としては、隣家の寝室や自宅の寝室の窓に近い位置を避けて配置することが基本です。設計段階で外構計画とあわせて位置を決めておけば、後から移設する費用を避けられます。
理由5:IHクッキングヒーターの調理の違和感
調理方法が変わることへの抵抗感も、「やめとけ」と言われる理由に挙がります。IHは直火が使えないため、網焼きや炙り調理はそのままではできません。
また、鍋を振る中華料理のような調理はしにくく、土鍋や一部のアルミ・銅製の鍋はIH対応品に買い替えが必要です。日常的に料理をする方ほど、この差は無視できません。

一方で、天板がフラットで掃除がしやすい、火を使わないため立ち消えの心配がない、夏場の調理中に室温が上がりにくいといった評価もあります。実際にショールームで操作してから判断すると納得感が高まります。
理由6:日中在宅の家庭では割高になりやすい
オール電化向けの電気料金プランは、夜間の単価を安く、その代わりに昼間の単価を高めに設定した時間帯別プランが一般的です。この仕組みが合わない生活スタイルだと、期待したほど安くなりません。
共働きで日中は家に誰もいない家庭なら、割安な夜間に電気を使えるため相性は良好です。反対に、在宅ワークや小さな子どもがいて日中もエアコンを使う家庭では、割高な時間帯の使用量が増えます。
この点は、太陽光発電を載せることで大きく状況が変わります。昼間の電気を自宅で作れれば、割高な時間帯の購入量そのものを減らせるためです。
- 電気料金の値上げの影響をまるごと受ける
- 停電すると給湯も調理も止まる
- エコキュートの初期費用と交換費用が高い
- 設置スペースが必要で運転音への配慮も要る
- IH調理に違和感を覚える場合がある
- 日中在宅の家庭では割高になりやすい
こうして並べると、どれも「オール電化そのものが欠陥」という話ではないことがわかります。生活スタイルや敷地条件との相性を確認しないまま決めることが、後悔の主な原因といえます。
オール電化を選ぶメリットも押さえておく
デメリットばかりが目に入りやすいテーマですが、オール電化が選ばれ続けているのには理由があります。判断材料として、プラス面も同じ密度で確認しておきましょう。
基本料金が電気の1本だけで済む
ガス併用では電気とガスの両方に基本料金がかかりますが、オール電化は電気だけです。使用量に関係なく毎月発生する固定費なので、長期で見ると差が積み上がります。
特にプロパンガス地域では、都市ガスに比べてガス単価が高くなる傾向があります。都市ガスが敷地の前まで来ていない土地では、この差が判断に効いてきます。
太陽光発電・蓄電池との相性がよい
オール電化の最大の強みは、太陽光発電との組み合わせやすさです。家中のエネルギーが電気なので、自宅で発電した分をそのまま給湯・調理・暖房に回せます。
売電価格は制度開始当初に比べて大きく下がっており、発電した電気は売るより自家消費に回すほうが有利な状況です。近年は昼間に沸き上げるモードを備えたエコキュートも増え、太陽光との併用を前提とした使い方が広がっています。
蓄電池を加えれば、昼間にためた電気を夜に使えるようになり、停電時の弱点も一定程度カバーできます。蓄電池の価格帯や選び方は、以下の記事で詳しく解説しています。

火を使わない安全性とメンテナンス性
調理時に火を使わないため、衣服への引火や消し忘れのリスクを抑えられます。小さな子どもや高齢の家族と暮らす家庭では、この点を重視する方も少なくありません。
また、ガス機器の定期点検やガス漏れへの備えが不要になり、管理する契約先も電気の1社に絞られます。日々の手間という意味でもシンプルになります。

オール電化とガス併用を4つの軸で比較する
ここからは新築の注文住宅を前提に、初期費用・ランニングコスト・災害時のリスク分散・太陽光との相性という4つの軸で比較します。全体像を先に表で確認しましょう。
| 比較軸 | オール電化 | ガス併用 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 高め(55〜90万円) | 抑えやすい(35〜70万円) |
| 基本料金 | 電気のみ | 電気+ガス |
| 料金変動 | 電気の改定を全面的に受ける | 電気とガスに分散 |
| 停電時 | 給湯・調理ともに停止 | ガスコンロは使用可 |
| 太陽光との相性 | よい(自家消費しやすい) | 給湯分は自家消費できない |
| 交換費用の目安 | 40〜60万円/10〜15年 | 15〜30万円/10〜15年 |
※2026年8月時点の一般的な目安です。機種・地域・敷地条件によって変動します。
初期費用の差は20万円前後が目安
新築時にかかる設備まわりの初期費用を、内訳で見比べてみましょう。ガス併用ではガス管の引き込み工事が必要になる点がポイントです。
| 項目 | オール電化 | ガス併用 |
|---|---|---|
| 給湯設備 | 40〜60万円 | 15〜30万円 |
| 調理機器 | 15〜30万円 | 10〜20万円 |
| ガス引き込み | 不要 | 10〜20万円 |
| 合計の目安 | 55〜90万円 | 35〜70万円 |
差額はおおむね20万円前後に収まるケースが多く、住宅本体価格から見れば決定的な差ではありません。ただし前面道路の状況によっては引き込み工事費がさらに膨らむこともあるため、土地が決まった段階で確認しておくと安心です。
設備以外にどれくらい費用がかかるかを含めた総額感は、以下の記事で坪数別に確認できます。

ランニングコストは生活時間帯で逆転する
毎月の光熱費は、どちらが安いと一律には言えません。夜間の割安な時間帯にお湯を沸かし、日中の電気使用が少ない家庭ならオール電化が有利になりやすい構図です。
反対に、日中の在宅時間が長くエアコン使用量が多い家庭では、割高な時間帯の使用が増えて差が縮まります。基本料金がガス分だけ少ない分をどこまで相殺するかが分かれ目です。
加えて、住宅そのものの断熱性能が光熱費に与える影響も大きい要素です。2025年4月からはすべての新築住宅で省エネ基準への適合が義務化されており、断熱仕様の底上げが進んでいます。
災害時はどちらにも弱点がある
災害時のリスクは、エネルギーを1本化するか2本に分けるかの違いとして整理できます。オール電化は停電ですべてが止まる一方、復旧は電気のほうが早い傾向にあります。都市ガスは大規模地震のあと安全確認を経てから復旧するため、供給再開までに時間がかかることがあります。
つまり、どちらを選んでもカセットコンロや飲料水の備蓄といった備えは必要です。設備の選択だけで災害対策が完結するわけではない、と考えたほうが現実的です。
太陽光を載せるなら相性はオール電化が上
太陽光発電を設置する前提なら、オール電化との相性の良さは明確です。発電した電気を給湯や調理にも回せるため、自家消費率を高めやすくなります。ガス併用では給湯で使うエネルギーがガスなので、その分は自家消費に回せません。
逆に、屋根形状や日射条件から太陽光を載せない方針であれば、この優位性は働きません。太陽光の設置可否とセットで考えることが判断の近道です。
オール電化が向いている人・慎重に検討したい人
ここまでの比較を踏まえると、判断は生活スタイルと敷地条件でほぼ決まります。それぞれの特徴を整理しました。
オール電化が向いている人
- 太陽光発電や蓄電池の設置を検討している
- 共働きで日中は家に人がいないことが多い
- 都市ガスが敷地の前まで来ていない土地に建てる
- 火を使わない安全性を重視したい
- 契約先や設備の管理をシンプルにしたい
慎重に検討したい人
- 直火や中華鍋を使う調理にこだわりがある
- 在宅ワークなどで日中の電気使用量が多い
- 太陽光発電を載せない方針で決まっている
- エコキュートの設置スペースを取りにくい敷地
- 停電時にお湯を使える手段を残しておきたい
どちらにも当てはまる項目がある場合は、ガス管だけ引き込んでおく、給湯はガスで調理はIHにするといった中間案も検討できます。二択で決めきらないことも1つの答えです。
オール電化にするか決める5つのステップ
迷ったときは、順番に条件を確認していくと判断しやすくなります。設備の話から入らず、生活と土地の条件から詰めていくのがコツです。
平日と休日で、家に人がいる時間帯を書き出します。日中の在宅時間が長いかどうかが、時間帯別プランとの相性を左右します。
前面道路にガス管があるか、引き込み工事にいくらかかるかを確認します。プロパンガスしか選べない地域なら、ガス単価も含めて試算しましょう。
屋根の形状や日射条件から、太陽光を設置するかどうかを先に決めます。載せる方針ならオール電化の相性は良く、載せないなら比較の前提が変わります。
オール電化とガス併用の両方で、初期費用と年間光熱費の試算を依頼します。前提となる使用量や単価がいつ時点のものかも必ず確認してください。
標準仕様の給湯設備や断熱性能は会社ごとに異なります。同じ条件で複数社のプランと見積もりを並べると、設備差の影響が見えやすくなります。

オール電化で後悔しないための3つの対策
オール電化を選ぶ場合でも、事前の準備で後悔の芽はかなり摘めます。契約前に押さえておきたい対策を3つ紹介します。
電気料金プランは契約前に試算する
時間帯別プランの単価と、自分たちの生活時間帯を突き合わせて試算しておきましょう。「オール電化だから安い」ではなく、使う時間帯まで見て初めて判断できます。
あわせて、そのプランが将来見直される可能性も想定しておくと安心です。単価が変わっても家計が回るかどうかを、余裕を持って確認しておきましょう。
停電への備えは設備と道具の両面で用意する
設備面では、蓄電池や太陽光発電の自立運転機能があると停電時の選択肢が広がります。予算的に難しい場合でも、カセットコンロと飲料水の備蓄は必ず用意しておきましょう。
また、貯湯タンクからの取水方法は入居時に確認しておくことをおすすめします。いざというときに操作方法がわからないと、せっかくの備えが使えません。
エコキュートは容量と設置場所を慎重に決める
貯湯量は家族人数に対して余裕を持たせるのが基本です。容量が足りないと湯切れが起き、割高な時間帯に沸き増しすることになります。
設置場所は、隣家と自宅双方の寝室から距離を取れる位置を優先しましょう。外構工事の計画と同時に決めておくと、動線や見た目の面でも収まりが良くなります。

筆者自身、家づくりでは設備よりも想定外の出費に悩まされました。外構工事の見積もりが600万円を超え、結果的に別の業者へ依頼したという経験があります。給湯設備の数十万円の差だけを見て判断すると、総額の感覚を見誤りかねません。
また、4社を回って比較したことで打ち合わせ回数は大きく増えましたが、その手間をかけた分だけ納得して決められました。給湯や調理の方式も、複数社の前提条件を並べて初めて違いが見えてきます。
設備選び以外にどこで後悔が起きやすいかは、以下の記事でまとめています。

オール電化に関するよくある質問
まとめ:オール電化は「やめとけ」ではなく生活スタイル次第
オール電化が「やめとけ」と言われる理由は、電気料金の変動リスク・停電時の影響・エコキュートの費用や設置条件・IH調理の違和感に整理できます。いずれも事前に確認できる内容で、生活時間帯と土地の条件、太陽光を載せるかどうかで判断が決まるのが実際のところです。
標準仕様の給湯設備や断熱性能は会社ごとに異なるため、同じ条件で複数社のプランを並べて比べることが近道になります。タウンライフ家づくりでは、間取りプランと資金計画を無料で取り寄せられるので、オール電化とガス併用のどちらが自分たちに合うかを見極める材料として活用してみてください。




